映画 「ルルドの泉で」 

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評価★★

 vidonews.comで高い評価を受けていたこともあり、あと個人的に宗教をテーマとした物語が好きなことから興味が湧いて、渋谷のイメージフォーラムに観に行った。主役は、「サガン」のシルヴュー・テステュー。

 フランスとスペインの国境のピレネー山脈ふもとにあるカトリック教会の巡礼地で、聖母マリアが現れたと言われて以来過去に何度も奇跡を起こしてきた村として年間600万人以上の巡礼観光客・患者が訪れるルルド。本映画は、全身が動かない不治の病を患った主人公がルルドでの短期療養ツアーに参加し、祈りを捧げながら奇跡を求めていく物語。とはいえ、わらにもすがる気持ちでルルドに訪れる患者は今なお多く、累計1億人を超える人々が訪れてきた長い歴史の中で公式に奇跡と認定された人はたった67人しかいない。「奇跡を授かった」と教会に申請した人は過去に7000人前後いるらしいが、厳しい審査を受けて公式認定されたのはわずかなのだ。村にいる神父も、どうしたら奇跡が起こるのかと尋ねてくる巡礼者への対処法を分かっており、「神に懸命に祈ったからといって奇跡がおこるとは限らない。結局、奇跡を決めるのは神の自由意思なのだ」と諭す。当然、科学的見地から普通に考えれば奇跡など起こりえない。そうした現実もあるせいか、患者や来訪者の中には半信半疑で療養を受けているもの、冷やかしに来る観光客も多い。村で働く若い介護従事者たちも、当初の動機こそ誠実かもしれないが、結局は同僚との恋愛ごとに心奪われて、患者への対応もなおざりだ。そんな中、主人公クリスティーヌにツアー最終日、奇跡が起こる。深夜、寝ているときにふと目が覚めると、自分ひとりで体を起こし、ベッドから立ち上がって鏡の前まで歩くことができたのだ。奇跡に喜ぶ母、神父や関係者たち。一方で、同じツアーの参加者の中には、「そんなに敬虔でもないくせになぜ彼女に起きて私の娘には起きないのか」として嫉妬を表情に出すもの、「またすぐ元に戻るわよ」と奇跡を信じないものも出てくる。そこから本映画のテーマは、彼女の回復は一時的なものなのか、本当に奇跡なのか。奇跡だとすれば、どうして彼女に奇跡が起きたのか、に収斂していく。

 しかしながら、それら疑問への答えは最後まで暗示すらされない。観るものに考えさせるような終わり方と言っていいだろう。だから、本映画がハッピーエンドなのかバッドエンドなのかも不明瞭である。どちらかというと、自分の幸福に対して他人というものはかくも不寛容なものかと、人間のどうしようもない性(さが)を見せつけれて終わったようで、私はどうも釈然とせず映画館を出ることになった。