小説 「涼宮ハルヒの消失」 谷川流著


涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)
(2004/07)
谷川 流

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評価★★★



  いま若者に人気の大ヒット小説といえば、「涼宮ハルヒ」シリーズである。2010年冬までのシリーズ累計発行部数は650万部、テレビアニメ化もされており、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのラノベである。しかし、もう齢40を間近に控えるおっちゃんのワテクシ、名前しか知らなかった。そんなとき、雑誌ダヴィンチに「涼宮ハルヒ特集」が組まれていることを知り、そこに社会学者の西田亮介による高い評価が掲載されており、一気に興味を抱いた。曰く「涼宮ハルヒには、最大多数の共感がある」という。映画も音楽も小説も共感ベースのテーマでつくられ、それがヒットする現代社会。facebookmixiの「いいね!」ボタン機能に辟易している私であっても、少しは後学のためになるのではと思い、同雑誌で筒井康隆が絶賛していたシリーズ4作目の「涼宮ハルヒの消失」を買ってきた。

  作品自体は2006年10月刊行。まず読み始めて驚いたのが、著者である谷川流の表現力。修飾語の語彙は大人もうならせるほどに高く、描写力も「これってラノベなの?」と思わせるほどだ。
  ストーリーは、冬休みを控えた高校一年生のキョンは、同じ学校の同級生でSOS団を率いるツンデレの女子高生、涼宮ハルヒら団員と一緒にクリスマスで鍋パティを開くことにする。ハルヒの強引な指示のもと、団員は準備に追われる。しかしクリスマスをあと一週間に控えた朝、学校に向かう途中でクラスメイトの谷口に会うと、昨日まで元気な彼が突然カゼを引いていると聞かされ、話もかみ合わず、違和感を抱く。教室のハルヒの席にはハルヒはおらず、前作までに転校したばずの朝倉涼子がなぜか座っている。おかしいと思って友人の古泉一樹がいる他のクラスに向かうと、古泉はおろかクラスそのものが存在せず、団員の朝比奈みくる鶴屋さんにはSOS団にかんする記憶すらない。まるで過去が消え去り、違う空間世界に生きているかのように。茫然自失とするキョンは文芸部室に向い、アンドロイド少女の長門有希を見つけ、何が起こったか尋ねる。

  終わり方はとてもアニメ的だ。最近、アニメ的=非現実的という感じがしないでもないが。なんだかエヴァを想起させる。長門有希は、まるで、あまりしゃべらない不思議なクーロンとして主人公の碇シンジと微妙な位置関係にある、綾波レイに見える。キョンはもちろん碇シンジであり、涼宮ハルヒツンデレのアスカラングレーだ(いや、みさとさんかなw)。それはそうとも、本作品、小中高生向けのラノベ(エンタメ)としては一級品だ。私が小学校のときは「すっこけ三人組」シリーズをたくさん読んだ記憶があり、それが今の活字好きにつながっていると思が、要は何でもいいのだ、こうした作品を読みこなして活字に慣れていき、どんどん小説に触れていって欲しい。