「アルコール―少量飲酒習慣から健康障害が始まる」 ハンス・H. コルンフーバー著


アルコール―少量飲酒習慣から健康障害が始まるアルコール―少量飲酒習慣から健康障害が始まる
(2004/01)
ハンス・H. コルンフーバー

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評価★★★★


  メキシコ奥地の走る民族「タマウラナ族」とのウルトラマラソンの描いた「Born to Run」のNHK出版がtwitterで大絶賛していたので買った本。ただし、すでに絶版ゆえ、amazonで中古本を5000円出して買っちまった。「少量飲酒から健康被害が始まる」との副題の通り、肝硬変や脳萎縮、アルコール性てんかんはもちろんのこと、癌やアルツハイマー性痴呆症などに至るまで、多くの人が「酒は(少量なら)百薬の長」と言うアルコール摂取が、習慣化すると極めて体に害をもたらすことになることを滔滔と述べた本。読めば、きっとアルコールは減らそうと思うはず。

? アルコールは熱源にならない、エンプティーカロリーだから太らないはウソ。
肝臓の脂肪化は酒を飲まない人にはまったく発生しないが、今では成人男性の84%、成人女性の72%に認められる。アルコールの摂取でできるアセトアルデヒドコルチゾールを過剰分泌させることで、腹部内臓の脂肪が増加してしまう。たいていの人は、「栄養の吸収がよくなったのかな?」と思って食事量を減らすが、脂肪の分解が阻害されているため、食事を減らしたところで脂肪は減らない。統計によれば、太った人は痩せている人よりも食べる量が平均して少ない。つまり、アルコールによって少しだけ食べても太る体質になってしまったのだ。
 
? 太っているのは遺伝の問題?
遺伝も関係するが、太っている人の多くは内臓脂肪型であり、内臓脂肪型の多くは若い頃に痩せていた人が多く、太ったのは飲酒が原因。動物実験でも明らかだが、アルコールは中性脂肪を増加させる。運動は肥満の解消になりにくい。肥満者のエネルギー消費量がやせている人よりも少ないという統計はない。実は、運動不足が肥満を招くという通説の証明すらできていない。が、飲酒は証明可能だ。肥満者はアルコールを習慣的に摂る傾向にある。アルコールによって少しだけ食べても太る体質となり、太った人が飲酒すると一層その体質が強化される(女性は殊更に)。

? 食塩の摂りすぎが高血圧の原因だというのはウソ。
塩分の摂取量が多い北部日本人は高血圧が多いとされるが、もともと民族的にアイヌの血が混じっており、アルコール許容量が大きく、飲酒が南部日本人より多いためである。飲酒は高血圧だけでなく、インスリン抵抗性ももたらし、脳卒中へと導きやすい。

? フレンチ・パラドックスはデマ。
赤ワインは心筋梗塞を予防するといったフレンチパラドックスはデマである。フランス人にもアルコール起因の死亡者は非常に多い。飲酒習慣に乏しくアルコール摂取量の少ないスカンジナビアの人たちは、フランス人よりもドイツ人よりもイギリス人よりも長命である。

? アルコールは発がん性リスクも一気に高くする。
肝臓内でエタノールが酸化されてできるアセトアルデヒドは、ホルムアルデヒド同様に体に有害。そのほかアルコールは多くのフリーラジカルも産む。アセトアルデヒドフリーラジカルも多くの酵素を破壊し、臓器を刺激し、結果として癌も招く。飲酒が禁じられているモルモン教徒では、他のアメリカ人やカナダ人に比べて癌による死亡率が約半分と低い。

? 女性は酒に強い。
女性のアルコール許容量は男性の3分の1程度でしかない。また、男性に比べて飲酒により癌になるリスクもはるかに高い。乳がんの発生率も高くなる。
 
? 元来、男性は女性より長命のはず(福岡伸一せんせと違うような)。
エストロゲン不足は太りすぎ、高脂血症心筋梗塞アルツハイマー型痴呆を引き起こす。(モルモン教徒や北欧諸国を除く)欧州諸国や日本における男性の際立って高い死亡率は、若年時の(交通事故等を軸とする)死亡事故、高年齢時の癌によるもので、それらはどれもアルコール消費量との強い相関関係が認められる。ゴルバチョフ時代の禁酒政策時、ロシア男性の平均寿命は延びている。禁酒法時代のアメリカでは男女の死亡率は一緒だった。


さて、本書、結論では、政府は酒税を大きく上げて摂取量を抑える政策をとり、個人は週末の一日だけ少量をたしなむ程度にせよと主張する。私も今までの生活習慣を大きく改善し、アルコール摂取量は大幅に控えなくてはならないと強く感じた。そして、読んでから1カ月のいま、アルコール摂取量は減ってない。