映画 「ブルーバレンタイン」

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評価★★

  
  2010年米映画。アメリカ、ニューヨーク。舞台は、ペンキ塗装工として働く子煩悩な父親(ライアン・ゴスリング)と若干倦怠期に入っているかのように日々疲れた表情の元女医の妻(ミシェル・ウイリアムズ)、そして何も知らずに無邪気に遊ぶ幼き娘の3人生活。それは毎日同じような生活が続き、妻は夫に何か変わって欲しいと促しつつも、夫は愛する妻と娘のために生活を営み楽しむだけで幸せのよう。
 
  そんな折、妻は酒屋で昔の彼に出会い、女医を目指して懸命に勉学に励んでいた頃のことを思い出す。そして、突如、女医としての仕事も得るようになる。そこから物語は、夫と妻の二人の出会い、そして恋愛の歴史も交錯し始め、そのスイートで情熱的な二人の関係がオーバーラップする。なんと、娘は、妻が以前に付き合っていた男性との間に出来た子どもであり、それを自分の子どもとして受け入れた今の夫の包容力によって成り立っていたのだ。

  しかし、時は残酷だ。妻は日々変わらない夫との生活に嫌気が差し始め、その嫌気は夫が気付かないうちにひとりで醸成され、不満となって高まっていく。よく恋愛の一風景として、「私は今まで不満だったのよ、それを溜めてきたのよ。それをあなたは知らなかっただけ」という一風景のように。
 
  結果、二人は破局を迎え、無邪気な幼子が預かり知らぬままに別れる二人の姿を映し出しつつ物語は終わる。私はこんな物語だと、こんな結末だと、まったく知らなかったから、「えっ、これで終わり!?」となんだか宙ぶらりんになったような気持ちになった。こんなことなら最初にストーリーを少しだけでも知っておけば良かったと思う。そうすれば、二人の切ない気持ちにもっと照準を合わせながら観ることができ、もっと楽しめたかも知れない。

  あと、こんな離婚率の高いアメリカではよくあるのかも知れないが、そもそも女医を目指す優秀な医学生と塗装工(出会ったときは引越し屋のバイト)の恋愛は、悲しいかな、釣り合わないのだ。私からみたら塗装工の夫はすごくやさしく、すごく健気でかっこいい。妻を心から愛し、自分の血をわけた子どもでもない他人の子どもに対し、自分の子ども以上に愛情を与えている姿は涙を誘う。確かに向上心が妻たちに比べれば薄く、妻からみたら単純労働でしかない仕事を朝から酒をあおりつつこなしているだけかも知れないが、一部のエリートを除けば男性など大概そんなものではないのだろうか。ことに日本の男性からみれば、概して妻にも子どもにもこの夫ほど優しくない。本映画の宣伝文句にある、「永遠に・変わらない愛なんて、ないの」は本映画のテーマではない。テーマは「不釣合いな恋愛は互いの違いがいずれ露呈する」ということではないか、悲しいけど。