映画 「エリックをさがして」 ケン・ローチ監督

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評価★★★


 「ケス」「マイネームイウジョー」「レイインズストーンズ」「麦の穂を揺らす風」など多くの作品を撮ってきた英国人監督ケン・ローチの最新作。2009年英映画。どれもドキュメンタリー風で重たい社会派映画ばかりの作品の中で本作品は異色というか、初めてであろうコメディタッチ。

 舞台はマンチェスター、前妻の二人の連れ子を育てながら郵便配達夫として働いているエリックが持病のパニック症候群の発作で交通事故を起こしてしまうシーンから始まる。昔は得意のダンス力を活かした華麗なステップで踊るように郵便物を仕分けしたものだが、今は女房に逃げられて久しく連れ子とはいえやんちゃで手のかかる二人の息子の養育に疲れ、仕事にも身が入らない。逃げていった前妻との以前に夫婦関係を持っていた妻との間に娘がいて、その娘は大学生ながらすでにシングルマザーである。その前々妻は若いときにダンスを通して知り合った女性だが、あるときパニック症候群の発作で自分から逃げ出してしまって後悔している。娘にはたびたび孫の面倒をみてもらうよう頼まれ、ときおり前々妻とも会う機会があるものの、誤る勇気もない。

 自室に飾るポスターは地元フットボールチーム、マンチェスター・ユナイテッドの英雄、カントナ。引退した今もエリックはカントナを愛している。あるとき、そのポスターに話しかけてみると背後から声がした。カントナが立っていたのだ。カントナはエリックを元気付け、前々妻との間を修復しようとアドバイスを授け、カントナを信奉するエリックはそのアドバイスに従い、行動するようになるという映画。観ていて笑える、楽しい映画だった。

 そういや、カントナ、サーカー小僧であった私にはとっても懐かしい。92−97年の英プレミアリーグで活躍していたのだが、私は95年にロンドンにいたからよく分かる、カントナの人気はそれこそものすごいものだった。言葉にも長けていて、ピッチ外でもサッカーファンを楽しませてくれていた。そういやロンドンに住んでいた95年の1月末、観客へのカンフーキックしたことがスポーツ紙の1面にデカデカと載ったことを思い出した。一年間の出場停止で、その後ピッチに帰ってきたが、ちょっと活躍して引退。あれほど楽しませてくれた選手ってそんなにいないもの。