映画 「キック・アス」

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評価★★★

  調べたら、アンジェリーナ・ジョリー主演のアニメ映画の原作を書いたマーク・ミラーの同名コミックが原作で、プロデューサーにはブラッド・ピットが名を連ねている。日本語字幕の監修は町山智弘。

舞台はニューヨーク。スポーツも勉強もあまり出来がいいとはいえず、アニオタで家ではネットサーフィンかオナニーばかりしているうだつのあがらない高校生デイブが、ヒーローに憧れ、ネットで注文したコスプレ服で街にくりだし、悪との戦いに挑むっていう話。とはいっても彼に何か超人的な戦闘力があるわけではない。街に繰り出したその日に腹を刺される始末。そのうち勇姿が撮影されてネットに動画投稿されると一転、「キック・アス」として英雄視されはじめる。ある日、好きな女の子を助けるべくチンピラ宅を襲撃すると逆に殺されかけてしまう。そのとき、ニコラス・ケイジ扮するバットマンばりの本格的なヒーロー、ビッグダディと、11歳になるその娘ヒットガールが突然現れ、チンピラを退治してくれる。彼らは地元を牛耳る巨大マフィア組織に復讐するため武器を身につけ戦闘術を学んだ本格的な自警団、いわばヒーローだったのだ。そこから本映画の主役はデイブからヒットガールに交代したかのように、ヒットガール親子はマフィア組織のチンピラ共をつぎつぎに殺し、マフィアの大ボスを追い詰めていく、ハラハラドキドキのバイオレンスアクション。

 しかし納得いかないのはキック・アスことデイブのキャラ。仲間といえば気色悪いオタクばかりで、同じ学校のお気に入りの女の子にはゲイとみなされている。なんとか彼女を射止めるべく、キック・アスとして女の子に言い寄るチンピラ達を退治しようとするも逆襲され、死に掛けたそのときにヒットガールに助けられる。つまり、女の子を助けたのはヒットガールなのに、女の子にはキック・アスが助けたようなセリフを吐き、しかも夜中にその女の子宅に侵入して「キック・アスは自分だ」と告白して女の子をゲットする。ってか、告白したその夜にやっちゃうんだ、さすがは性欲あふんばかりの高校生。でもって、食堂の裏のストックヤードで女の子と激しいセックスを楽しんじゃうくらいだ。更に、そのキック・アスが罠にかけられたせいで、ヒットガールの父親はチンピラに殺されちゃうほどだ。人助けにもならない。ヒットガールはひとりマフィア組織との最終戦争に挑むこととなる。

 そもそもこういううだつのあがらない男がスーパーヒーローになるという話自体が苦手で、途中までは気に食わなかったが、ヒットガールとその父親の復讐劇アクションが格好よくて爽快で、大いに楽しませてくれた。涙をさそうほどに感動的なシーンもある。やっぱ、ニコラス・ケイジは名優だ。今回は特に演技が抑制的で、渋さを漂わせている。まるで戦闘マシンのように鍛え抜かれた殺傷能力と、小利口でツンデレ風な会話が魅力のヒットガール役の少女もとってもキュートで、チンピラどもを殺しまくるアクションシーンは小気味よく、手に汗にぎり興奮できた。ただし、何度も言うが、どう切り取っても魅力的ではないキモオタ男子がヒーローに祭り上げられ、なんだかわからないうちに都合よくリア充女子をゲットし、命の恩人の父親を死なせてもなお女の子とイチャつく、っていうストーリーには共感できない。