映画 「ミックマック」 ジャン=ピエール・ジュネ監督作

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評価★


アメリ」を撮ったジャン・ピエール・ジュネの最新作。偶然居合わせた発砲事件の流れ弾を脳に受け、職を失ってホームレスになった主人公が、ふとした出会いでスクラップを集めて修理・創作する一風変わった集団に仲間入りする。彼らに混じってガラクタから機械じかけの作品をつくって売る生活を続けているうちに、自分が受けた弾丸の製造会社で、かつ、自分の父親の死因となった地雷をも造って販売している武器商人の会社を知ることになり、仲間たちと一緒に鮮やかに復讐(いたずら)するという物語。

今回もアメリ同様、ファンタジックな物語で、物語の最初の方に出てくる出来事が後から考えるとすべて伏線になっているという、すごーく造り込まれたサスペンス的作風に感心する。とはいえ、主人公を筆頭に登場人物にどれも華がない。メインプロットは復讐物語としても、サブプロットがない。いや、サブプロットはおそらく主人公と、体が軟らかい中年女性との恋なのだが、どちらの人物造形も人間的魅力に欠いており、二人の恋の動機づけも不明瞭だ。はっきり言えば恋など必要ないほどにプロットが薄い。

 コミカルはストーリーで笑いどころはたくさんあったはずだが、10人くらいいた劇場内で、笑っていた人は一人もいないようだった。