小説 「飛ぶ教室」 ケストナー著

飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)
(2006/09/07)
ケストナー

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評価★

 1933年にドイツの小説家ケストナーが書いた児童小説。これもTBSラジオの深夜番組「life」の「この夏に読むべき一冊」コーナーで紹介されていたので買って読んでみた。
 
 ワタクシは小説を読むに際し、最初に本文に入る前に巻末の著者あとがきや翻訳者等の解説を読んでしまう癖があるのだが、本書の解説(翻訳者の丘沢静也が執筆)には本書は児童向け小説とはいえ、「大人の流儀」が描かれた、大人にも楽しめる本だと書いてあった。しかも丘沢氏はなんと、「自分がこの本を再読したときはもうすでに大人、なんと禿げ始めてさえいた」と自ら禿げていることまでカミングアウトしてまで本書の面白さを表現しており、「お、これはきっと面白いに違いない」と読む前から興奮を覚えてページを開いた。
 
 しかしながら、その興奮は読み終えた瞬間に消えうせていた。スリルのない在り来たりの先が読めるストーリー展開、常套句ばかりで子供だましの文章、現実世界と遊離した偽善的な正義と友情、そのどこに大人の流儀があるのだろう。もし、それが大人の流儀と言うならば、そもそも大人の流儀なんてどんな児童書にも多少なり見受けれられやしないか。

 もちろん最後、登場人物の一人であるジョニーが語り部となってまとめるシーンが救いと言えば救いだが、どう考えても「星の王子様」や「モモ」など児童小説の名作に及びもしない、でもまっこと著名な児童小説である。