ハリウッド・リライティング・バイブル (夢を語る技術シリーズ)ハリウッド・リライティング・バイブル (夢を語る技術シリーズ)
(2000/02)
リンダ シガー

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評価★★★


 2000年刊行。ハリウッドの著名な脚本コンサルタント、リンダ・シガー氏が書いた、脚本をリライト(推敲)する際の実践的ガイドブック。リライト用とはいえ、初めて脚本を書く人、あるいは脚本家になりたいと考えている人、あるいは何でもいいから文章を書いている人(ワタクシ)・そう考えている人、皆それぞれにためになる参考書と言ってもいい。脚本家にしてシナリオアナリストの榎本憲男さんがtwitter上で絶賛していて興味を持った。だが、すでに絶版。古本サイトなどを探していたら、ヤフオクに5000円で出品されていたので、高額だけど衝動的に落札してしまった。

 本書はまず、脚本向けに着想したアイデアをどう記憶していくかという基本からスタートする。たとえば、常にインデックスカードを持ち歩いて書き留めるのがいいのか、ノートを使うのがいいのか、ボイスレコーダーがいいのか。
 
 続いて映画の一般的な構成の話に入る。ほとんどの映画の最初の15分くらいは、観客にこの映画がどんなものであるのか、登場人物は何者で、どんなストーリーとなるのかを提示する「セットアップ」と呼ばれるものから始まるという。ここで重要なのは、「セントラルクエスチョン」と言われる、主人公(登場人物)がこの映画を通して求めている目的は何か、何をを達成しようとしているのかということで、これがハッキリ分からないとボヤっとした映画になるという。セットアップが終わると、三幕構成となる。一幕で目的達成のためのアクトが進行し始め、二幕でそのアクトのスピードが増す。三幕がクライマックスで、それが終わると主人公は目的を果たすための長い旅から(成長して)帰ってきて結末を迎える。ただし、主人公が達成したい目的は一つとは限らない。旅の途中で別の目的も生まれたり、事件に巻き込まれたりもする。それらがサブプロットであり、それらは主人公の主目的を達成するための旅(メインプロット)だけでは観客を飽きさせないようするためのテクニックである。それらは得てして主人公の恋愛物語だったり、自分探しや人間的成長の物語だったりする。メインプロット、サブプロットともに、勢いが必要で、ボクシング映画なら主人公がライバルに何度か負けてしまうといった「バリア(障壁)」の設定が欠かせない。恋愛映画なら、自分や相手の気持ちが揺れ動く「コンプリケーション(複雑化)」が必要だし、戦争映画なら戦況が一変する「リバーサル(逆転)」を設けないと観るものは飽きてしまう。

 ここまでなら、いわゆる起承転結が大事だということほぼ同様で、誰でも当然だと思うに違いない。
 でも本書の魅力はそれら基本技術に加え、もっと踏み込んだテクニック、たとえば、?映画のテーマに何か普遍性(観客を共感させる反戦、家族愛、復讐など)はあるのかどうか?神話的な世界観(ギリシャ神話の英雄伝のような)をストーリーに盛り込んでいるかどうか――といったことが、実際の映画などを参考に分析・例示している。
 
 確かに参考になることばかりであった。でも、ちょっと待てよ。ワタクシが脚本を書く機会なんて、、、これからもないんじゃないだろうかw。