映画 「17才の肖像」 

17

評価★★★★★

  2008英映画。ロネ・シェルフィグ監督作。脚本は「ハイフィディリティ」や「ぼくのプレミアライフ」などの青春小説で有名なニック・ホーンビィ。わたしの好きな小説家でもある。内容は、裕福とはいえないまでも普通の家庭に一人っ子として育った16才の女子高生が、ある30代男性と出会って恋に落ちる物語だ。

 舞台は1961年、英国ロンドン郊外。高校に通う16歳の女の子は、学校の先生も一目置くほど成績優秀で、オックスフォード大学への入学を目指している。娘の進学を最優先する両親の期待を受け、退屈な勉強を重ねる毎日、息抜きはシャンソンを聴きながらあこがれのパリに思いを馳せること。父親は女の子を楽団に入れてチェロを習わせているが、「チェロを弾くのはあくまでオックスフォードの入学審査の際に審査官に好印象を与えるため」とハッキリ断言するほどに世俗的だが、娘のためを思う、よくある普通の父親だ。
 ある雨の日、傘を忘れて雨に打たれながらバスを待っていると、雨にチェロが濡れるからといって一人の男が声をかけてきた。下心を感じさせない紳士然とした姿勢は好感を抱かせ、車に同乗したことをきっかけに二人の関係がすすみ始める。男は女の子が接したことのない30代の大人の男性、骨董品の売買を手掛けていて夜の社交界に通じ、芸術にも造詣が深そうな、いわゆる、お金持ち。言葉も巧みで、女の子を父親をうまく説得、いや、大学進学に有利だからと巧言令色、女の子を演奏会やクリスティーズ、夜のサロン、ドッグレース等に連れ出していく。女の子はこれまで触れたことのない大人の遊びの虜になり、知性とセクシャリティを兼ね揃えた男を好きになっていく。そして、父親をだまして一緒に出かけたパリ旅行、女の子が17歳の誕生日を迎えたその日、ついに二人は結ばれる。二人の恋は盛り上がり、結婚することになる。オックスフォード大進学を夢見ていた父親も、「もともとオックスフォード大進学は人生で成功するため、お金持ちの男性と結婚して幸せになるのなら学校もやめるがいい」として、二人の結婚を礼賛する。

 もちろん、そんな二人の幸せが続くようではこの映画に魅力はない。まるで予定調和のように、男は実は妻子持ちだったことが分かり、ついでに男は事業にも失敗し、連絡もつかなくなる。一緒に天国への階段を上ってきたつもりの女の子もその両親も、その階段が実はまぼろしであったことを知る。

 本映画の原題は「AN EDUCATION」(教育)。女の子は心の傷という対価を払って大きな人生勉強をしたわけだ。なんといっても、最後がすっごくいい。かなしくて泣けてくるが、その直後、一陣の風のような明るくさわやかな光が差し込んでくる。そう、人生って失敗してもいいんだよな〜。ある瞬間に絶望を感じても、きっと絶望ではないんだ。そして周囲にはきっとどこかに自分を支えてくれるやさしい人がいる。

 今年観た中でいちばん良かった。