「仕事するのにオフィスはいらない − ノマドワーキングのすすめ」 佐々木俊尚著

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
(2009/07/16)
佐々木 俊尚

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評価★★★

09年7月光文社新書から刊行、著者は元毎日新聞記者のITジャーナリスト、佐々木俊尚。彼は同じく09年に「2011年 新聞・テレビ消滅」という新書を出していて、インターネットが新聞やテレビの垂直統合モデルを駆逐し、現在のままでは収益構造が立ち行かなくなると述べた。さらには、アマゾンのkindleやアップルipadなど電子書籍という黒船が襲来する本2010年、それがまさに現実化していくということをテーマに新作「電子書籍の衝撃」という本を書いている。おそらく、「2011年 新聞・テレビ消滅」がマスメディアに動揺をもたらしたのだろう、いまや著者は各種メディアに引っ張りだこの売れっ子、「旬」のライターだ。Twitterでも大人気だ。ただ、悲しいかな、この著者、文章があまりうまくない。

 閑話休題。さて本書は、サブタイトルにあるように「ノマドワ−キングのおすすめ」の本。ノマドワーキングとは、ノマド(=遊牧民)のごとく定住地(決まった職場、オフィス)を持たずに仕事をするってことらしい。確かにブロードバンドとクラウドの時代、ネットブックスマホがあればノマドワーキングが可能であり、高い家賃を払って職場を持つ必要性ってどれだけあるんだろ?という疑問はワタシでも分かる。たとえば、営業マンならいちいち会社に出社・帰社する必要ないわけだ。なら職場持つのはやめて近くのカフェにでも集まればいい、そうすりゃ家賃分のコストが減る。そんな、職場を持たない会社が現実に少しずつ増えているという。わたくしのいる会社だって、編集部のみんなは全員ノマドワーキングできるはずで、近い将来、それが実現する可能性は大いにある。

 もちろん、オフィスを持たないデメリットについても著者は指摘していて、衆人環視がなくなってから、注意力・集中力が散漫になるから、個人で集中力を管理するアテンションコントロールが必要だという。そうね、でもオフィスのないデメリットはもっとある。オフィスは、仕事仲間や上司・部下の関係を円滑にし、情報を共有してそれをブラッシュアップさせたりブレインストームさせる一方で、競争意欲やモチベーションがかきたてられる場所、「コンベア」(装置)としての価値もある。職場はひとつの世間、社会であり、いやがうえでも他人と長い時間を共有しなきゃいけない以上、世知を覚え、人間的に成長することもある。それらの点をどうクリアするか、ノマドワーキングの課題であろう。

 ところで本書には彼自身がノマドワーキングの一環に使っているソフトやアプリが紹介されているんだけど、どれも結構参考になる。おかげさまで、恥ずかしながらようやくgmailgoogleのニュースリーダーを使い始めたし、日経テレコン21が無料で使えるっていうから楽天証券の新規口座申し込みをしたし、仮装ドライブの役目をもちケータイからのアクセスもできるっていうからオンラインストレージZumodriveを自宅と会社のパソコン内に組み込んだ。今後は、書評や読書記録などをトータル管理できるMediamarkerも使うだろう。