映画 「マイレージ、マイライフ」

mailege2.jpg

評価★★★


 ジョージ・クルーニーと言えば、男のオレから見ても色気を感じる、セクシー俳優。セクシーさはすなわち派手さでもあるから、彼が主役を張った映画は彼がどう演じようと、どうしてもなまめかしい雰囲気ともにゴージャス感が醸し出されてしまう。その個性を予定調和として利用する監督ばかりで、観なくてもストーリーが透けて見えてくる。だからこれまで彼の出る作品を観たことがなかったし、今回も普通にスルーするつもりでいたが、巷の予想外の好評価が気になり、川崎の映画館に足を運んだ。

 ジョージ・クルーニー演じるビジネスエリート、ライアンは、リストラ対象者の従業員に企業の人事部に代わってリストラ、つまり首を宣告する役目を負うプロ、いわばリストラ請負人である。毎日が出張、マイレージを貯めて航空会社に表彰されることを夢に抱き広大な米国全土を飛び回り、対象者に人生のやり直しを進めている。毎日が出張だから住まいは持たない。「バッグの中の荷物は軽い方がいい」が持論で、講演会も開いている。背負う荷物は軽い方がいいから妻も家族も持たない主義を標榜、でも夜になればかっこよく女を抱くのがエグゼクティブだ。ある夜、バーで出会った女は自分と同じような全米を駆け巡るビジネスエリートだった。
 
 そんな彼が一人の新人女性社員を面倒みることになった。大学を首席で卒業した彼女はリストラのオンライン通告システムを社内提案する。リストラ社員の感情を落ち着かせるには直接会うことが大事だとライアンは訴えるも、会社は大幅な出張経費の削減が得られるため運用を決断、システムが稼動するまで間の彼女の教育役をまかされた。最初はオンライン通告システムなどドライで人情味も無いと切り捨てていたが、そのシステムを考えた彼女はドライではなくナイーブで、自分に素直。なおかつ彼とは対照的に家庭的で古風な考えを持っており、彼は自分のドライさに気付かされ、次第に感化されていく。
 
 リストラは人生の終わりなのか。それとも新たな人生の始まりなのか。親兄弟ら家族をないがしろにしても仕事に没頭することが地位を確立させ、スタイリッシュな生活を保障してくれるのか(そうしないとリストラされる可能性さえ生まれるのか)。それとも会社から距離を置いて家族や社会との絆を大事にすることが本当の幸せなのか。要はバランスなのだろうが、いったん落ちたら這い上がれない「滑り台社会」(湯浅誠)こそ現代の企業社会の世界的特徴であり、誰もが悩むことだろう。それらの問いに、本作品は答えてはくれない。結末もハッピーエンドではない。とはいえ、バッドエンドでもない。観ようによっては希望を持たせてくれる。でも悪くない。どこか琴線に触れたような余韻が残る。さすがは「ジュノ」「サンキュースモーキング」の監督、ジェイソンライトマンだけある。大衆的なハリウッド映画とは一線を画している。

mailege2.jpg

評価★★★


 ジョージ・クルーニーと言えば、男のオレから見ても色気を感じる、セクシー俳優。セクシーさはすなわち派手さでもあるから、彼が主役を張った映画は彼がどう演じようと、どうしてもなまめかしい雰囲気ともにゴージャス感が醸し出されてしまう。その個性を予定調和として利用する監督ばかりで、観なくてもストーリーが透けて見えてくる。だからこれまで彼の出る作品を観たことがなかったし、今回も普通にスルーするつもりでいたが、巷の予想外の好評価が気になり、川崎の映画館に足を運んだ。

 ジョージ・クルーニー演じるビジネスエリート、ライアンは、リストラ対象者の従業員に企業の人事部に代わってリストラ、つまり首を宣告する役目を負うプロ、いわばリストラ請負人である。毎日が出張、マイレージを貯めて航空会社に表彰されることを夢に抱き広大な米国全土を飛び回り、対象者に人生のやり直しを進めている。毎日が出張だから住まいは持たない。「バッグの中の荷物は軽い方がいい」が持論で、講演会も開いている。背負う荷物は軽い方がいいから妻も家族も持たない主義を標榜、でも夜になればかっこよく女を抱くのがエグゼクティブだ。ある夜、バーで出会った女は自分と同じような全米を駆け巡るビジネスエリートだった。
 
 そんな彼が一人の新人女性社員を面倒みることになった。大学を首席で卒業した彼女はリストラのオンライン通告システムを社内提案する。リストラ社員の感情を落ち着かせるには直接会うことが大事だとライアンは訴えるも、会社は大幅な出張経費の削減が得られるため運用を決断、システムが稼動するまで間の彼女の教育役をまかされた。最初はオンライン通告システムなどドライで人情味も無いと切り捨てていたが、そのシステムを考えた彼女はドライではなくナイーブで、自分に素直。なおかつ彼とは対照的に家庭的で古風な考えを持っており、彼は自分のドライさに気付かされ、次第に感化されていく。
 
 リストラは人生の終わりなのか。それとも新たな人生の始まりなのか。親兄弟ら家族をないがしろにしても仕事に没頭することが地位を確立させ、スタイリッシュな生活を保障してくれるのか(そうしないとリストラされる可能性さえ生まれるのか)。それとも会社から距離を置いて家族や社会との絆を大事にすることが本当の幸せなのか。要はバランスなのだろうが、いったん落ちたら這い上がれない「滑り台社会」(湯浅誠)こそ現代の企業社会の世界的特徴であり、誰もが悩むことだろう。それらの問いに、本作品は答えてはくれない。結末もハッピーエンドではない。とはいえ、バッドエンドでもない。観ようによっては希望を持たせてくれる。でも悪くない。どこか琴線に触れたような余韻が残る。さすがは「ジュノ」「サンキュースモーキング」の監督、ジェイソンライトマンだけある。大衆的なハリウッド映画とは一線を画している。