映画 「母なる証明」 ボン・ジュノ監督作

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評価★★★

 韓国人監督、ボン・ジュノの最新作。ボン・ジュノの作品は、3人の監督による3作オムニバス映画「TOKYO!」を観たことがある。レオン・カラッススとミシェル・ゴンドリーとの、いわば競演だったが、他の2人に比べてボンジュノの作品が最も分かりやすい筋立てで、甘く温かなストーリーと柔らかな映像美がうまくマッチしていた。

 今回は、子を思う母の愛の強さを描いたミステリードラマ。静かな田舎街で知的障害を持つドジュン(ウォンビン)は、薬剤師で鍼師の母親と仲むつまじく暮らしている。母親にとって、読み書きができなくても息子は息子、まさに生きるかすがいだ。息子が何か問題を起こしてもすべて母親が解決してくれる。しかし、ある日、ドジュンが友人に飲みに誘われて出掛けた夜、一人の女子高生の殺人事件が発生、ドジュンが容疑者として逮捕される。息子は人を殺すような人間では決してないと信じて疑わない母は、ドジュンが犯人だと決めつける警察に対抗し、事件の真犯人を自らの力で探し始める。息子を思う母親の愛は強く、徐々に事件の真相に迫っていく。

 結末はけっしてハッピーではないが、さすが世界的評価を受けただけに、鬼気迫る演技を見せる母親役の女優や終盤までハラハラさせるストーリー展開に支えられて、濃厚で深みのあるものに仕上がっている。もはや、韓国映画は日本映画のレベルを大きく上回っているのではないか。監督はキム・ギドクらを挙げるまでもなく洗練と才気を感じさせる連中が多く、演技力に裏打ちされたパワフルな俳優も豊富。マンガっぽいベタでありきたりなストーリーや、若くて美形なだけで演技力のない俳優ばかりの日本映画の現状と比較すると、差は歴然としている。そもそも、たいしてキレイでもない母親が主役の映画なんて、今の日本じゃ売れない、ってか上映されることもあまりないだろう。つまり、ワタクシを含めた観客のレベルの問題なのだ。