ゲリー・ケネディ著 「ヴォイニッチ写本の謎」  青土社 

ヴォイニッチ写本の謎ヴォイニッチ写本の謎
(2005/12)
ゲリー ケネディロブ チャーチル

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評価★★★


 1912年に突如発見された「ヴォイニッチ写本」という暗号めいた文字が記された謎の古文書をめぐる、その発見当初の様子とその後の解読作業の歴史、そして現在の状況まを英BBCが包括的に調査取材したドキュメンタリー番組を書籍化したもの。担当ディレクターらが書いている。友人であるム○イ夫妻に誕生日プレゼントとしてもらった。
 
 ヴォイニッチ写本(Voynich manuscript)は、ポーランドアメリカ人のヴォイニッチという古書商が1912年に発見した、暗号のような不可解な文字で記されたテキストと多数の植物やニンフの挿絵からなる、作者も作成年代も未検証の古文書( http://www.voynich.com/)。曼荼羅(マンダラ)のような、一見すると宗教性を帯びた作品で、発見者のヴォイニッチは13世紀の哲学者、ロジャー・ベーコンが書いたとして公表していた。しかし、ロジャー・ベーコン説はすぐに否定され、その後は、テキストの解読がすすむ。ウィリアム・フリードマンという、第二次世界大戦中に日本軍がつくった精緻な暗号文書の解読にした天才も含めて、多くの人々が解読に挑戦したが、すべて不首尾に終わっている。

 本書はその古文書について、その発見公表当初の様子や、解読の歴史、現代の有力説などを詳しく時系列にまとめあげ、丁寧に解説している。日本には類書がまったくないから、存在を知ってる人は少ないだろう。それはさておき、世紀のイタズラか捏造に違いないという意見もあり、もはや解読は諦められている状態で、今はイエール大学に寄贈されているらしい。一気に読めるというより、なるほど〜と感心しながら読む感じ。最初はなんなんだろう、この正体不明な古文書って眉をひそめながら読んでいったんだけど、途中からグッと惹き込まれた。まるで、スケールの大きな歴史ロマンの長編番組を観ているかのよう。そっか、もともとドキュメンタリーの脚本だったね。