映画「新世紀エヴァンゲリヲン新劇場版・破」 庵野秀明監督

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評価★★★

 95年頃から放映されていたテレビアニメの劇場版。劇場版はテレビシリーズが終わって何度か上映されており、ワタクシは97年頃、その最初の作品となる「シト新生」だけ観ている。

 あらすじは言うまでもないけど、念のため書くと、 近い未来の地球に、大災害セカンドインパクトが起こって、地球上の人類はだいぶ少なくなる。そこに、謎の敵「使徒」がたびたび襲撃してくる。それに対抗すべく人類がこしらえたのが、人造人間「エヴァンゲリヲン」。ただし、それを操縦するパイロットは母親のいない14歳の子供に限られる、っていう物語。

 さてワタクシ、最初の劇場版を97年頃に観ただけで、テレビシリーズはもちろん、その後の映画もみんな観たわけではないから偉そうなこと言うつもりはない。ただ、観終わって思ったのは、よく出来ているなということ。

 97年に最初に観た映画は、巷間、多くの社会学者・映画評論家から、「小さな話にこだわりすぎる主人公の、自分探し感が強い、よくいえば世相をよく表した物語」みたいに言われていた。たしかに、内容が一般受けしない、マニアやファンだけ共感できればそれでいいというような、いわゆる島宇宙化していて、ホント自分探し感の強い物語だなあと思ったのを憶えている。

 でも、今回の新劇場版は、今まで観たこのない、知らない人でも楽しめる、エンターテイメント性の強い映画に仕上がっていた。映画館にいる2時間、十分に楽しめる。
とはいえ、映画というより2時間ドラマ風(ちゃんと「続き」もあることを終わりに告げている。と思ったら、今回は「新劇場版」としての4部作のうちの2部作目だった。知らなかったw)。映画っぽさがない。前観たときよりも遙かに分かりやすくなっていて、楽しめるのはいい。一方で、前のような(たとえ自分探しではあっても)全体を貫く硬いテーマのようなものがない。なんていうか、前の映画で感じた、監督庵野秀明の、「この映画、この2時間で観客にオレの気持ちを分かってもらうんだ、この一回にかけるんだ」というような、プライドあふれるメッセージがない、だから迫力がない。だから多くの映画が持つテレビドラマに比べた品のよさ、芸術的センスがない。そっか、いい意味での若々しさがなくなったのかも知れない。カドが取れて丸くなったのはいいけど、同時に、刃物のような鋭さも消えうせたオッちゃんみたいな感じだろうか。

 ちょっと言いすぎか。いやいや面白い映画です。

 

※補足

 ところで、こういう戦闘モノのアニメって、宇宙戦艦ヤマトにしろ、ガンダムにしろ、マクロスにしろ、登場する女の子は、みんな痩せていて手足が長く、なぜかオッパイだけデカいw。そして主人公の男の子は、みんな気が弱い。身体も小さく、体力がありそうな雰囲気はない。けど、才能があって特権的に選ばれていて、ヒロインの女の子がやさしくかまってくれる。ちょっとだけ、作者の卑屈さを感じますw。しかも、敵に対しては、みんな協力して一致結束して、攻めてくる相手と戦う。攻めてくるから戦わざるを得ないっていう設定。ステレオタイプだと思う一方、いかに先の大戦が日本人に与えた影響が大きいものだったか。とっても考えさせられます。