映画 クリーン」

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評価★★★★

 青山のイメージフォーラムで観た、2004年仏・英・カナダ映画。フランス人監督、オリヴィエ・アサイヤスの作品で、彼の前妻マギー・チャンが主演。マギー・チャンジャッキー・チェンの「ポリスストーリー香港国際警察」に出てたらしいが、うーん、思い出せない。けれど本作品、そのマギー・チャンが、実に感動的ともいえる、神がかりの体当たり演技をしている。あまりに演技が真に迫っていたから、観ているといつの間にか惹き込まれ、途中途中で泣けてくるほどだ。本作品で彼女はカンヌ映画祭主演女優賞を受賞、当然の報いだと思う。

 マギー・チャン演じるエミリーは、才能はあれど売れないロックミュージシャンの夫の傍らで、大手レーベルとのレコード契約を狙い日々奔走するマネージャー。自らもミュージシャンでもあるせいかプライドが高く、大手レーベル以外との契約なんて眼中にない。とはいえ、プライドの高さは周囲との軋轢を生む。軋轢は精神を不安定にさせる。不安定で脆くなった精神は、薬物に頼りがちだ。結果、エミリーも夫もドラッグ中毒者である。幼い息子が一人いるが、夫の両親に預けている。ある日、中小レーベルとのレコード契約をめぐって夫と口論になり、泊まっていたモーテルを夜中飛び出し、車の中で一夜を過ごす。明け方、モーテルに帰ってみると部屋の前には多くの警官、立ち並ぶ警官の奥では夫がベッドの上で麻薬の過剰摂取で亡くなっていた。悲しみもつかの間、エミリーも麻薬所持で逮捕、半年間服役することとなる。半年後、幼い息子に会いに夫の両親の元を訪ねるも、夫の父親(ニック・ノルティ)は、無職で精神状況も不安定な今のエミリーに子供を渡せないと告げる。承知したエミリーはすべてをやり直すべく、独身時代に住んでいたパリに移住、親戚の持つレストランで働き始めるも、勝ち気な性格や高いプライドが邪魔をし、すぐに辞めてしまう。ふと周囲を見渡すと、昔の同僚はどんどん出世しており、自分は友人のアパートを間借りする生活。息子を引き取りたい気持ちばかりがあせる。一人になると、愛していた夫の残像がフラッシュバックしてくる。そんな折、義理の父親が息子をエミリーに会わせようとエミリーのもとにやってくる。

 こうあらすじを追っていくとズッシリ重い物語だが、そうでもない。意外に乾いている。展開がスピーディで、かつリズミカル、こちらが考える暇なくどんどん進行し、力強ささえ感じる。見終われば、観ているものが勇気さえもらえるような、心地よさ。とってもいい映画である。