評論 「日本の10大新宗教」 島田裕巳著

日本の10大新宗教 (幻冬舎新書)日本の10大新宗教 (幻冬舎新書)
(2007/11)
島田 裕巳

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評価★★★

 オウム真理教事件の際、それまでオウムに擁護的だったと批判を受けたことで長らく活動を抑制していた著名宗教学者島田裕巳が書いた、現代新宗教新興宗教)の入門書。

 10大新宗教といっても、島田教授が勝手に選んだもので、団体としての規模や教義の優劣を尺度に選び抜かれたわけではない。キリスト教系やカルト(狂信)的側面の強い宗教は除外している。当然、同氏の嫌いな幸福の科学は無視されているw。選ばれたのは、天理教や大本、生長の家といった神道系、立正佼成会創価学会真如苑といった仏教系のほか、真光、PL教団、GLAなどで、それら宗教団体の成り立ちから組織拡大への背景・要因、現在の活動実態などを簡潔に説明している。島田氏自身の評価・主張は敢えて避けられ、かなり客観的装いの文体になっているが、それはそれでイマイチ物足りない面もあるw。

 ところで、それら新宗教の多くは同根、ってか、創立者自身がもともと他の新宗教に入信してて、後になって独立したり分派したりして創ったというケースが多いのね。ともかく、それら新宗教には、高度成長や核家族化を背景に「貧・病・争」からの脱却(つまり、現世利益)を訴えたものが多いから、その時その時の社会背景にマッチすれば信者が増えて団体は拡大していくけど、時代を経て価値観が変われば適合しなくなり、努力しても利益がないと思われれば離れられてしまうリスクを持つ。だから、天理教にしても創価学会にしても、今ではだいぶ勢いを失い、信仰の継承が第一課題となっているという。しかも、オウム事件が日本に与えた衝撃がトラウマとなって、結果的に新宗教への目が厳しくなり、どこも活発な動きを示せなくなっている。10大新宗教といっても、そのほとんどはなんか衰退に向かいつつある感じだ。

 著者がずっと言ってきたように、新宗教は(終末論や世直しを強調してカルト化したり、極度な金集めに走らない限りにおいて)既成宗教では満足できない人々の精神を安定させ、同時に自律を促して生活水準の向上に寄与するプラスの側面を持つ。でも現在は、オウム事件のトラウマもあって、そうしたプラスの側面が発揮されづらくなっているという。なるほど、江原啓之や細木数の子などのスピリチャリズム隆盛の一端には、そうした背景もあるのかも知れないなと思わされた。