映画 「TOKYO!」 ミシェル・ゴンドリー、レオン・カラックス、ボン・ジュノ

左がミシェル・ゴンドリー、中レオン・カラックス、右ボン・ジュノ

評価★★★
  
ミシェル・ゴンドリー、レオン・カラックス、ボン・ジュノの3人の巨匠がそれぞれに撮った3つの短編映画。共通したテーマはなく、関連性もない。単に東京を背景にして、それぞれの監督が自由に製作している。

 個人的には、大学時代に観て美しき恋愛映画「ポンヌフの恋人」のレオン・カラックス、以前はゴダールの再来と言われつつも寡作の監督のためなかなか作品に接する機会のなかった彼が、どんな風に東京というカオティックな都会を料理したのか、とても楽しみにしていた。
 
 しかしながら、上映最初のミシェル・ゴンドリーの作品に続いて2番目に上映されたレオン・カラックスの映画は、私が勝手に求めていた恋愛映画ではなく、東京の地下に潜む謎の怪人が人々を恐怖に陥れるというおどろおどろしいストーリー、多分に社会性を持った作品だった。日本という閉鎖的な社会への風刺なのか、あるいは、世界的規模で進んでいる人々の排他意識への怒りなのか。そもそも東京で撮る必要があったのか。レオン・カラックスは自分なりに東京を捉えようとしたのだろうけど、結果は自分の思想の鋳型に東京をはめ込むこととなったように思う。うーん、やはり彼には、これぞ人間、これぞ愛、みたいな哲学性豊かな作品に挑戦して欲しかった。
  
 個人的に好きなのは一作目、ビュークらミュージシャンののPVで有名になったミシェル・ゴンドリーの作品かな。映画監督を志す彼氏と一緒にポンコツ自動車に乗って東京にやってきた女の子が、着々と夢に向かって歩み始めた彼氏と自分を比較し、バイトすら見つからない自分を恥じ、戸惑いを感じ始めるという話だが、終わり方がさわやかで心地いい。なるほど、多くの女性ってたとえ男性から理論的に攻撃されるなどして迷い、戸惑い、元気を失っても、心の奥底には自分はこういう人間なんだと理解する別の人格を絶えず確保していて、最後はその核のようなものにちゃんと戻ってくる強さを持っている。
 あっ、主役の藤谷文子、ショートカットが似合っててかわいかった。ことに、フラジャイルな笑顔がいとおしい♪。鈍感さとナイーブさを同時に持つ人間の儚い笑顔、いわゆる「恋愛体質」な女性の多くが有する脆さを秘めた笑顔と言ってもいい、そうした表情を演技せずとも元から備えている感じでとっても良かった。