戯曲「夜の来訪者」  プリーストリー著 岩波文庫

夜の来訪者 (岩波文庫 赤 294-1)夜の来訪者 (岩波文庫 赤 294-1)
(2007/02)
プリーストリー

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評価★★★

 イギリス人の劇作家プリーストリー(1894―1984)が書いた著名な戯曲(らしい。知らなかったw)。1947年刊行で、原題は”An Inspector Calls”。

 あるイギリスの裕福な工場経営者家庭が娘の婚約を祝って開いた晩餐会の夜、父と母が娘と婚約者の幸せを祝って杯を交わす最中に、突然、警部を名乗る男が扉を叩く。ある貧しい、若く美しい女性が消毒液を飲んで自殺したという。しかも、その自殺には働いてた会社をクビになったこと、つまり一家の父親が経営する工場の仕事をクビになったことが大きく関係していると警部は言うのだ。また、自殺に関係しているのはその工場主の父だけではない。会社をクビになって、次に職を得た洋服店では父の娘の八つ当たりによって再び解雇されることになったのだ。それだけではない。警部は自殺の背後にあると思われる事件を次々と白日の下にさらし始めるが、そのいずれも、母なり息子なり婚約者なり、一家の誰かに関係していたのだ。掴んだはずの幸せは一気に崩れ始める。一家全員が女性の自殺に少しずつ責任があるのだ。

 最後はどんでん返しあり。小説や戯曲をよく読んでいる人には予想がつきやすい筋書きだとは思うが、まあこれが戯曲の特徴なのだろう。最後まで文章は歯切れよい。もともと短いこともあって読み始めたら一息で読める。ただ、戯曲っていつもどうしてこうして物足りなさを覚えるんだろう。確かに面白い戯曲だとは思うが、帯にあった「息もつかせぬ展開」は褒め過ぎだと思う。