映画「さよなら、いつかわかること。」  (2008.5.4)

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評価★★★★★

 監督はジェームズ・ストラウスという若き無名の新人、音楽をクリント・イーストウッドが担当している。

 愛する妻が兵士としてイラクに従軍。寂しさを押し殺して2人の娘の育児にいそしむ夫のもとに突然、妻の戦死の報告が届く。あまりにも急な訃報に動揺し、幼い娘たちにどう事実を伝えらるべきか迷い、思わず娘たちを連れ旅に出てしまった父親の姿をつづったロードムービー
 
 父親役は、「ハイ・フィデリティ」(2000年公開)で活動的な青年を演じていたジョン・キューザック。今ではでっぷりと太ってくたびれた中年オヤジ感漂っていることに少し驚いたが、そのおかげもあって当映画の父親役には相応しい。演技もパーフェクトであった。自らも兵士を志願していたが、目が悪いために除隊を余儀なくされ、一方、女性である妻がイラクに勇んで従軍、男である自分は残った娘2人の世話をしているというコンプレックス。一方で、子供たちの前では優しきパパでいなければならず、ホームセンターでの単調な仕事に耐えながら慣れない育児に疲弊している様子。妻の急な訃報に動揺し、抑えれど込み上げてくる悲しみに蓋をし、現実を受け入れることに輾転反側する姿。辛い事実を告げるには幼すぎる娘達にどうやって告げようかと悩み苦しむ様子。どのシーンも観る者の目に焼き付くほど完璧だ。幼き子供2人もいとおしいほどに可愛らしく、どこまでもあどけなく天真爛漫な妹の姿も、母がいなくて寂しい中で妹をあやし父を気遣う姉の姿も、ともに自然で、観ていて切なくなる。3人の役者がこんなに素晴らしいと、スレた私でも感情移入して涙をこらえるのに苦労する。3人が最後に浜辺でかわす会話のシーンなんて、ホント観ていて自らの感情の高まりを抑えられない。

 あと、原題の ”Grace Is Gone” がそのまま邦題でなくて良かった。「さよなら。いつかわかること」と現代的でキャッチーなタイトルに替え、しかも中に「いつかわかること」を入れたことで、あくまでこの映画は父親の視点でつづった映画なんだということをちゃんと伝えている。いつか娘達に分かってしまうことだから、早く伝えないとダメなんだ、という父親としての覚悟が伝わる、とてもいいタイトルだと思う。