映画「サルバドールの朝」  (2007.10.8)

サルバドールの朝サルバドールの朝
(2008/03/26)
レオノール・ワトリングダニエル・ブリュール

商品詳細を見る

評価★★★

  1970年頃のスペイン・バルセロナ。主人公の青年、プッチは、受験勉強中に仲間をつくって反政府(反フランコ)主義に傾倒、活動にのめりこんで行く。ただ、活動は徐々に過激性を帯び、資金が乏しくなると銀行強盗にも手を染める。もちろん、そんな無茶な行為はそうも毎回うまくいくはずがなく、プッチも捕われの身に。しかし逮捕直前、たまたま放った銃弾が警官の一人に当たり、その警官が死亡。プッチは殺人を犯した政治犯として、死刑判決必至の身となる。
 でも実は、死んだ警官の体には、プッチが放った弾以外にも数発の弾があった。ならば、プッチが警官を殺した確証はない。確証がなければ、死刑にはならない。弁護士が一人、プッチを懸命に擁護する。しかし、警官の死体を処理した医師がなんと証言を拒み、公判は再び暗転、プッチは死刑となる。

 予告編で言ってた通り、ラスト30分間はとっても悲劇的。ってか、ズッシリ重い。最後の処刑シーンなんて、観てられないほど、むごたらしい。救いは、最後の最後まで必死で努力を重ねた弁護士の存在で、その努力は涙をさそう(泣かなかったけどw)。たぶん、そうした無償の愛とか、強い利他の精神とかそういうのが、わたくしの琴線に触れやすいのかな。

 ただ、誰だったかも評していたが、過激な活動にのめりこんでいく過程を描きたいのか、拘置所(刑務所?)の中で仲良くなった刑務官との心の触れ合いを言いたいのか、そうじゃなくて、やっぱり判決の不条理さを訴えたいのか。いまひとつ曖昧でよく分からない。しかも、最後のエンドロールに、オサマ・ビンラディン9・11テロの映像が出てきた。監督の企図がテロとか冤罪にあるとすれば、浅墓だと思う。
 
 主人公は、スペインの若き俳優、ダニエル・ブリュール旧東ドイツで暮らす若者の姿を描いた『グッバイ・レーニン!』ではういういしくて可愛らしかった。今回は、繊細でか細いけれど、正義感の強い青年を好演。なんか、とっても成長した感じ。