映画「インランド・エンパイア」  (2007.9.14観賞)

インランド・エンパイア 通常版インランド・エンパイア 通常版
(2008/02/22)
ローラ・ダーンジェレミー・アイアンズ

商品詳細を見る

評価★★★★★

 ケン・ローチと並んで大好きな映画監督であるデビッド・リンチの最新作。リンチ作品は、大学生の時(約12年前)に「ツインピークス」にハマって以来ずっと見続けている。

 例によって例のごとく、ホラーっぽくて、サスペンスぽっくて、観る者をおののかせ、引きつらせながら、あるようでないストーリーを提示しつつ、つかませ所を与えないまま、いつのまにか進んでいくという、迷宮のような叙述を得意とするデビッド・リンチ作品。今回もストーリーなんてものはない。突如うさぎ男が現れてきて、最初から観る者を迷わせようとしてくる。「繋がりなんてない、ストーリーなんてないんだよなあ」と思いつつ、ぼーっとスクリーンを観ていると、あるシーンをもって「もしかして、これは伏線ではないか」と思ってしまい、どこかに失くしたパズルを嵌め込むが如く繋がりを探し始める。「そうでもないか」と思い直して違うシーンを味わっていると、今度はそこが伏線に思えてきて、またもパズルの相手を探し始める。その繰り返し。結局いつのまにやら、映画に引き込まれてるんだ、パズルなんてないのかも知れないけど。かといって、どっちにしろ確たる筋書きを見出せないままにクライマックスに至るから、本来なら欲求不満になるはずなんだけど、不思議とそうならない。これでいいんだよと思えるすがすがしさ。なんでだろうな、誰かに解明してほしいものである。いや、解明させないほうがいいのかも知れない。