映画「フリーダム・ライターズ」  (2007.8.13)

フリーダム・ライターズ  スペシャル・コレクターズ・エディションフリーダム・ライターズ スペシャル・コレクターズ・エディション
(2007/11/02)
ヒラリー・スワンク.スコット・グレン.パトリック・デンプシー.イメルダ・スタウントン.マリオ.エイプリル・ヘルナンデス

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評価★★

 1994年のロサンゼルス。白人から黒人、ヒスパニック、東洋人と多くの人種がひしめき、そのためか人種差別が絶えず、1992年には多数の死者が出た大規模な暴動が起きている。それから2年、少しは沈静化したとはいえ、いまだ暴力の火種は消えず、数多くの事件が起きている。そのロスで、低所得者層の多い高校に新米教師として赴任した主人公の女性が、受け持ったクラスの生徒達の無気力さを変えるためにはどうしたらいいのか、必死で考え、行動し、それが生徒達に徐々に伝わっていくというストーリー。

 わたくし、人種差別とかがテーマとなると、「それはいけないことだよね」という、純粋まっすぐな(特に米国的)理想主義者のもつ、独特の雰囲気に、「まあそうだよね」と思いつつも、時に違和感や横柄さを感じ取ってしまう天邪鬼だから、本当はこういう映画って苦手なのだ。でもね、この映画、教師役の主人公はヒラリー・スワンク! 失礼だが、まったく綺麗だともかわいいとも思わない。でも、アカデミー主演女優賞を取った「ミリオンダラー・ベイビー」で彼女はド迫力の女ボクサーを演じ、わたくし、これホント、身震いするほどの驚愕を覚えた。そう、今回は彼女にこそ期待したんだ。

 新米教師の彼女が、配属されたのは、ロスでも暴力・麻薬等が頻発する地区の底辺校で、その中でも無気力な生徒達で有名な底辺学級だった。まるでクラスは社会の縮図であるかのように、人種別にグループが分かれ、その人種のグループごとに行動理念・様式を持ち、他のグループとは接触をしようとしない。接触しようとしてくるのは、わざと乱闘目的で突っ込んでくるイキガッタ野郎だけ。両親の離婚や教育放棄、虐待に悩んだり、麻薬に染まって抜け出せないなんて日常。そんな学校で生徒達は、己のアイデンティティー、つまり、所属グループを明確にさせる(己の人種を意識する)ことで、なんとか不条理の暴力から逃れ、日々を生きていこうとする。もちろん、その所属先は時に暴力から守ってくれ、安心感を与えてくれるが、一方で、他のグループとの対立を生み、疑心暗鬼を拡大させ、交流の機会を失わせる。生徒達はそのデメリットを重々わかっているが、日々の生活の方が大事だから抜けられず、いまそこの生活に役立たない学校の授業なんてまともに聞いてられない。
 
 主人公の教師はそうした生徒達の意識を変えようと必死で頑張ったわけだ。そこで役立ったのは、ホロコーストという歴史上最大ともいえる人種差別の中を必死で生きてきたユダヤ人女性、アンネ・フランクが書いた日記だった。いまそこにある人種差別が、人種間対立が、残虐な事件を産むんだということを必死で綴った彼女の本と、新米教師の熱き訴えは、徐々に生徒達の頑なさを解きほぐし、教室は徐々に変化していく。実話に基づいた映画。
 
 やっぱ、ヒラリー・スワンクはカッコよかったわ。でも、生徒達が最初反発し徐々に打ち解けるという予定調和と、その大げさな演技力が、演劇っぽくてダメだった。なんか、そのままミュージカルになりそうな脚本も、ミュージカルの苦手なわたくしにはいただけなかった。