「饗宴」  プラトン  (2007.7.18読了)

饗宴 (岩波文庫)饗宴 (岩波文庫)
(1965/01)
プラトン

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評価★★★★★

古代ギリシャの哲学者プラトンが、師匠ソクラテスらが参加した宴会の様子をつづったもの。とは言ってもドキュメントというよりも、まるで戯曲。かなりの部分はプラトンの創作なのだろう。

宴会には、当代最高の喜劇作家アリストファネスらが一堂に会し、酒を飲みながら、愛(エロス)について列席者が順番に演説する。スケベな話は一切なく、まさしくプラトニックでw、互いが思い思いのエロス神(ローマでいうキューピット)を賛美している。
真打ちとして最後に演説するのは、師匠ソクラテス

ビックリしたのは列席者がみんな、少年を愛することを尊いこととしていることで、新宿二丁目界隈では、この本をしてホモ小説の嚆矢とする向きもあるらしいw。
中でもソクラテスは少年が大好きなんだ。しかも、す〜ごくモテる。告白する少年達、はぐらかすソクラテスw。そして、なんとそのソクラテス、酒にもめっぽう強い。宴席が佳境に入り、酒が回ってみんな寝ちゃったんだけど、最後まで飲んでいたのはソクラテスアリストファネス、そしてソクラテスのお気に入りの少年の3人だけ。しかも、ソクラテスはその2人を寝かし付け後、一人沐浴に行くんだよ。彼は、かつて戦争に従軍していた際に仲間を助けた逸話を有しているほど頑強かつ勇猛でもある。読んでいて、なんか最後はまるでハードボイルド小説のよう!!

 そうそう、みんなが順に行うエロス賛美の演説、中でも、アリストファネスの演説が白眉。「なぜ人は他人を愛し求めるのか」について、独創的に自説を展開。彼に言わせれば、人間はもともとアンドロギュノス(両性具有)で、手脚が4本づつ、顔が2つついた球状の生物であったという。あまりに力が強く、そのパワーを恐れたゼウス神が、真っ二つに割ったそうなんだ。割られた半身は、どこかにいる片割れの半身と再び一緒になるために探し求め続ける。そのせいで、我々はパートナーを求め続けるんだという。それが愛や欲望の背景で、片割れの半身が見つかった暁にこそ幸せになるというもんらしい。

 短いのでアッという間に読める。ただ、50年以上も前の翻訳、読みづらいところも多々ある。岩波書店にはそろそろ新訳を御願いしたいだなも。