風に舞いあがるビニールシート 森絵都  (2006.8.8)

風に舞いあがるビニールシート風に舞いあがるビニールシート
(2006/05)
森 絵都

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 評価★★★★

6つの短編をまとめた、06年の直木賞受賞作。
オレが森絵都という女流作家を知ったのは約8年前、とある学校の先生が本を貸してくれたことがきっかけだった。それは森絵都の「カラフル」という、児童向け小説で、そもそも森絵都は児童文学の世界では有名だったのだ。読んでみて、ビックリ。その小説は、児童向けってのは分かる、平易な文章なのだが、当時26才前後のオレはその筆力に感心した。先生に本を返した際、先生は「なかなか、あなどれないでしょう」とニヤっとしたり顔だったのは今でも忘れない。大人をも十分にうならせるのだよ、彼女の作品は。
 
 何といっても彼女は、目にしたもの、耳で聞いたもの、触ったもの、そうした五感で感じとった物事に対する表現が、実に巧みなのだ。巧みとはいえ、華美で装飾的ではない。前衛的で、才能きらめく鋭敏さがあるわけでもない。かといって、単にシンプルなわけでもない。あくまで背景が文章に調和している自然さを感じさせ、それがゆえに、読む者にジワジワ染み入ってくる、と言う感じだろうか。
  
 一番好きなのは「守護神」。最後の「風に舞いあがるビニールシート」もいいね。