小説「アルケミスト」 パウロ・コエーリョ (2006.2.14)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)
(1997/02)
パウロ コエーリョ

商品詳細を見る

 評価★★★★★

昔、親交のあった女性に勧められたものの、童話や子供の話は全般に苦手なため、なかなか読み出せずにいた本。

 アンダルシアに住む、神父養成学校に通っていた少年が、旅することを望んで羊飼いになり、寝ている間だに見た夢がきっかけで、遠くエジプトのピラミッドに宝物を探しに行くこととなる。少年のもとにたびたび訪れる「前兆」(自然の教え)に従い、行く先々で出会った人々に人生の知恵をもらいながら成長し、徐々にピラミッドへ近づいていく。
 
 夢に向かって歩みを進めることの大切さを説いた童話、夢を諦めてしまった大人を奮起させる幻想小説。様々な見方ができるだろう。けど、違う。読後、最初の印象は、こんな本、読んだことない、って感覚。そして、強く感じるは、この小説の背後にある作者の世界観。ガルシア・マルケスの本を読んだときと同じ。ベースにあるのは、自然へのいつくしみ、先人への畏敬や神への服従といったこと。それも、作者の産まれ育った土壌(ブラジル)の芳醇さ、懐の深さなんだろうな。読んでみると分かります、描写や会話の節々に出てくる、言葉たちが、どれもこれもみな自然の摂理を捉えているようで、凄くいいんだ。まず、こんな本には出会えないのではないかな。