小説「容疑者Xの献身」 (2005.12.23)

容疑者Xの献身容疑者Xの献身
(2005/08/25)
東野 圭吾

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評価★★

今年発刊されたミステリーの中では、最高に評価の高い作品の一つ。沢山のミステリー評論家が絶賛し、05年のベスト作とする読者も数多い。それはその通りで、あっという間に読み終わった。
 
 数学者になる夢を断念したものの、その後も独学で研究を続けてきた、高校の数学教師。彼が住むアパートの隣に、子連れの元ホステスが越して来て、彼は人目でホレてしまう。その元ホステスは、暴力的で怠惰な前の夫につきまとわれ、耐えきれずに殺してしまうのだが、彼女に罪などないと信じる数学教師が、助け舟を出し、論理を駆使して偽装を試みる、というストーリー。
 
 事件を担当した警察の友達で、たまたま数学教師の元同級生であった物理学者が、事件の解明を手伝うこととなるのだが、人間心理上の盲点を突いた巧妙な偽装工作の論理との闘い、そして彼らの心理合戦は、かなり面白い。元ホステスへの無償の愛も、テーマの一つとなっており、その部分でも楽しめるだろう。
 
 惜しむらくは、登場人物がみんなして、あまり魅力的でないところ。誰にも、感情移入ができなかった。