「ライフ・イズ・ミラクル」 エミール・クストリッツァ(2005.8.31)

 

ライフ・イズ・ミラクルライフ・イズ・ミラクル
(2006/04/05)
スラブコ・スティマチ

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評価★★★★★ 

とにかく濃い、濃厚。

95年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作「アンダーグラウンド」を観たことがあるかい? この長編は、ハチャメチャなストーリー、溢れ出る役者のエネルギーに、オレは渋谷の劇場で、まさに「衝撃」を覚えたんだよ。その監督がエミール・クストリッツァサラエボ生まれの巨匠。故郷のボスニア・ヘルチェゴビナは現在、停戦中だよね、故郷の荒廃を嘆く監督が、再び戦地を舞台とする超大作を撮った。当作品にも、監督の内なる故郷への思いが、マグマ化され、一言では言い表せない濃厚さとなって作品に表出しているんだ。
 
 田舎の村に鉄道を敷くため、妻と息子を連れてやってきた、誠実で純真な鉄道技師の話。田舎の生活に耐えられなくなったのか、妻は駆け落ちして技師のもとを去り、戦争の勃発で出兵した息子が相手軍の捕虜となる。そのうち、息子をたすけるための捕虜交換条件の人質とてやってきたムスリム人看護婦と恋に落ちる。でも、捕虜交換で、二人は別れなければ...
 
 凄惨なボスニア戦争を経験してきた監督が、残酷な戦地を舞台にしたものだけに、「平和への希求」的メッセージもたくさん読みとることもできる。ただ、この監督はそれをアプリオリには語っていないと思うんだよ。だって、観ようによっては、コメディーだもの。登場する動物たち、猫もロバもまるで役者のように、主人公の人生劇場に参加し、強欲な政治家もお人好しな郵便局員も、ミュージカルのように、映画に花を添えるんだ。実際、バックに流れる音楽(監督が参加しているバンドの楽曲)も素晴らしく、耳に残る。
 
 こぼれ落ちるほど圧倒的なエネルギー。どこにいくか分からないほどハチャメチャな展開を一つにまとめるリズム感。とにかく濃厚。是非、映画館で観て欲しい。