映画 「永遠の僕たち」 ガス・ヴァン・サント監督作

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評価★★★★★

  ショーンペン主演の「ミルク」や「グッドウィルハンティング」で著名なガス
・ヴァン・サント監督の最新作。
 
  交通事故で両親を亡くし、自身も3日間の臨死体験を経験し、死の世界からやってきた幽霊を友人として生きている青年イーノック。自分以外の誰にも見えない幽霊は、太平洋戦争で神風特攻隊として死んだヒロシという日本人青年で、たまに出てきてはボードゲームをしたり一緒に線路や川で遊んでいる。イーノックは死というものが隣にある感覚から抜けきれず、いわば葬式ごっこでもするように、縁もゆかりもない他人の葬式に参列しては死を肌で感じようとする。そんな彼はある日、勝手に参列した他人の葬式で、難病を患い余命3ケ月と宣告された少女アナベルと出会う。死を既に受け入れたものとして互いに共通するものを感じて惹かれ合い、交際を始める。しかし、交際が時間とともに進むにつれて当然、アナベルの容態も悪化していき、イーノックは恋人アナベルがまもなく死を迎えることを受け入れられなくなる。
 
  少年から青年時代に差し掛かった若者ならば必ずもつであろう生への迷いと死への憧れ、純朴さ、一方で死を受け入れつつも最後まで楽しく生きようとする少女が放つが持チャーミングさ、儚さが、リリカルな台詞とともに美しく演出されている。最後、イーノックがしっかりと前を向き微笑むショットがたまらなくいい。けっして死を肯定するものではないからだ。イーノック役は、あのデニスホッパーの息子なのになんだか繊細で傷つきやそうで作品にピッタリマッチしている。アナベルミア・ワシコウスカで、若き日のグウィネス・パルトロウと彷彿させるユニセックスなショートカット姿がまたハマり役で、透明感たっぷりで非常にかわいい。幽霊ヒロシ役には加瀬亮イーノックのメンター的な役回りで難しい役所だが、英語も含めて完璧にこなしている。戦死する前に恋人に伝えられなかった想いを語りかけるシーンは思わず泣きそうになった。