映画 「ものすごくうるさくて ありえないほどちかい」 

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評価★★★★★

 アメリカではぜんぜん売れなかったし、アカデミー賞では候補作の中で最も評価が低かったみたいだけど、個人的にはすごく好きな映画。原作は「エブリシング・イズ・イルミネイテッド」のジョナサン・サフラン・フォア。監督は、これまた私の好きな「リトルダンサー」「めぐりあう時間たち」を撮ったスティーブン・ダルドリー。この組み合わせは観るしかない。

 映画の中身は、9.11テロがテーマとなっている。ビルゲイツも罹っていたとされるアルペルガー症候群の疑いのある頭は良いが少々癖のある少年が、9.11の際にWTCのビルの中で亡くなった父親(トムハンクス)が遺した一本の鍵を持ち、鍵に合う鍵穴を求めてニューヨークじゅうを探し回るというストーリー。鍵穴探しの作業のなかで、NYに住むさまざまな人々との出会い、謎の老人との間に芽生える絆、壊れかけた母親との関係の再生、そして少年が抱える誰にも言えない父親の死に関する秘密…など様々なエピソードが展開されていく。

 当然、9.11を扱っているだけにテーマは重厚だ。でもその重厚なテーマに劣らず、演技もストーリー展開も軽くなく、しっかりしていて裏切らない。最後はハッピーエンドだが、「どうせ(涙ちょだいものにありがちな)きれいごとでしょ?」みたいな違和感がない。年を取って涙が枯れてしまったのではないかと思っていた私ですら、最後すこし泣いてしまったくらいだ。もちろん、テロの当事者たるアメリカ人が観た感想とは違っても仕方ないとは思うが、それを間引いたとしても、正直どうしてこの映画の評価が低いのか、よく分からない。子供が生意気だからか、被害者家族にしては恵まれているからなのか。とにかく、わたしはこうした映画のファンで居続けたいし、居続ける気がする。