映画「弓」 キム・ギドク (2006.9.12)

弓
(2007/02/23)
チョン・ソンファン

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評価★★


 過去に数多くの映画賞を受賞してきた韓国の巨匠(まだ若いけど)、キム・ギドクの作品。観たのは「魚と寝る女」「春夏秋冬そして春」に続き、これで3作品目。

 海に浮かんだ一隻の古びた漁船に乗り、釣り客を案内して生計を立てる、口のきけない老人。弓で矢を放ち、占いも行う。時にはその弓で幻想的な音を奏でることもある。そして、老人に幼い頃拾われてきた美しい少女。2人は10年間も洋上、船の上で暮らし、世間から隔絶された生活を送ってんだ。老人は少女をまるで宝物のように大事に育てているが、その関係はとてもイビツだし、老人は少女が17歳になったら、結婚しようと目論んでいるんだ。そんな折、現れた一人の若い釣り人。彼は彼女と恋に落ち、彼女を救おうとする。果たして、老人と少女の、年の差を超えた恋愛は成就するのか。

 ギドク映画って、まず、映像が圧倒的に美しいのよ。例えば、背景となる撮影場所。現実にはなかなかないような静寂で風光明媚な自然を創り上げ、建築物はその自然と完全に調和したものしか存在しない。まるで、研ぎ澄まされた美しいものだけがその存在を許される、京都の「枯山水」のよう。そして、登場人物の人間模様。精神病を患っていたり、失明していたり、オシだったりと、いつもなんらかのハンディを持っている登場人物ばかりにあって、まるで能を観ているかのように、純愛の中に嫉妬や欲望が交差した愛憎劇が渦を巻く。だから、出てくる役者はいつも、あふれるほどの喜怒哀楽を表情に込め、力いっぱい演じるんだ。 
 今回もそうしたキムギドクらしい、世界観が表現された映画。当然、彼が好きな、訳の分からぬスケベなシーンも出てくる。ただねえ、やり過ぎだよ〜。少し妄想がすぎるぜ〜。年の差があり過ぎて、麗しいはずの純愛も、ただの犯罪に思えちまったよ。